西陣織の下絵を織物の縦糸と横糸の関係に置き換える仕事が「紋意匠」です。
下描きをする方は別の方で分業になっています。その下描きが色の無い線描だということを長いこと知りませんでした。無論色を入れて指定する場合もあるのですが、ほとんど暗黙の了解というか、約束事というか、があってこの段階の人がが色を決めていきます。

とはいってもこれを受け取った織屋さんが忠実に色を再現するのではなくて、織り屋の感性でアレンジしていくのだそうです。勿論、統括している悉皆屋さんが色を調整をすることもあるようです。

こうした仕事は・・・以前も書きましたが・・・コンピューターが最も得意とするところですから、仕事の多くはコンピューターに奪われてきています。

しかし、先に書いたようにこの紋意匠の職人さんはただ単に下絵を規則的に変換しているのではなくて、織りやすいように、あるいは織りの効果などを経験的に熟知していて、あるいは次の織り屋さんの技術の特性をも考慮してこの仕事をしています。
問題はコンピューターに入力する人の感性がこうした職人さんに追いついているかどうかということでしょうか。

実は私はこの方を別の場所で撮らせていただいたことがありました。そしてその時の写真を、写真を撮ることをお願いする人に見せる写真の一枚としていつも持って歩いているのです。
そのことをお話し、写真を見ていただきますと「確かにこれは私だ。」と言って大層喜んでいただきました。
そしてぜひ自分の名刺を受けとってほしいとおっしゃって、名刺ををくださいました。
この方も紋意匠の分野での「伝統工芸士」さんです。
それにしても京都の「伝統工芸士」さんは気さくで謙虚な方が多いですね。

この方を撮っていると一枚一枚が絵になるような気がします。
で、一層力が入り、周囲をさんざん回って撮りますが、一つも嫌な顔をされません。

こういう写真をパリやミラノノやフランクフルトや上海で見てもらったらどんな反応があるのでしょうか。
こんな話、今度の個展の時に集まってくれる旧友たちの「こき下ろす」かっこうの酒の肴になるでしょうか。
親しくしてくれている中国からの留学生が「今度フランス語を学び始めました。」と言うので「私がパリで個展をするまでに流暢に話せるようになってくれ。」と言っておきました。すると「是非役に立ちたい。」という返事でした。
きっと彼女の方は数年でフランス語をモノにするでしょうが、私の方は・・・・・。
まあそういう冗談はさておいて、それにしても、三代目古今亭志ん朝さんじゃないですが「なんて言っても旨くなりたいですよ。」ですね。
- 2014/10/23(木) 00:01:55|
- 伝統工芸
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「紋意匠」さんって 大変なんですね
「仕事の多くはコンピューターに奪われて・・・」
PCは あなどれません
「コンピューターに入力する人の感性」 に 関わらず
それなりのものが 再現できるから
写真は 二枚目? がいいですね
素人目ですけど・・・
- 2014/10/23(木) 21:39:42 |
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- Chieko #-
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そうですね。製造という点でいえばPCは侮れませんし、創造という面でもいろいろな模索がされていますね。PCの活躍の場面が増えてくるのは避けられないことでしょうね。
そこで既存のものはさらに何かを追求していかねばなりません。そのあたりがカギなんでしょうか。
2枚目のカラー写真を「いいですね」と言っていただきました。畏友はモノクロの二枚がいいといってくれました。
どちらも私としてはそれなりに狙いどころがあったのですが、評価が分かれます。そこが面白いところですね。
万人に認めてもらうということは、まあないわけですが、多数の人がいいよと言ってくれても自分としては・・・ということもあるわけで、・・・その逆も・・・・今度の個展に向けての作品選考でもこの点が問題でしたね。難しいです。
- 2014/10/24(金) 10:47:06 |
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- soujyu2 #-
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