昔、友禅の下絵は日本画家と言われる人たちも描いたんだそうです。
逆に職人さんたちも日本画の作品を勉強し、古典からも吸収します。
この方は尾形光琳の紅白梅図屏風の川の意匠からアイディアを汲み出そうをしています。

光琳の川の川の絵をご存知ですか。
いえきっと一度は本やTVの画面でご覧になっていると思います。

この方は光琳の絵を何度も模写しながらその特徴をつかみ出し、さらにそこに工夫を加えて帯の絵柄にしようとされていました。
一目見て「光琳だ。」ということが分かりながら、けれど現代的にアレンジしていこうとしているわけです。
ですから、何がどういう風に「光琳的なのか」を把握しておかなければならないわけです。

私などは川の流れを描いた渦巻きのような線を漫然としか見たことがありません。
「この線をよく見ると平行にきれいに描かれていたり、渦がキチンと丸くおさまっていたりはしないんですよ。」と教えていただいた。
傍らにある紅白梅図屏風の写真を指さして、その不規則な描かれ方をいちいちていねいに教えていただいた。

「それで流れの勢いや、よどみが表現されて生き生きとした動的な絵にな」っている訳です。
確かに渦も内側に巻いていたり、外にとけていたり、決して一様ではありませんでした。
「気付かなかったなあ。」

丁寧に丁寧に模写し、その絵を追体験することで「光琳」をつかんでいるのですね。
その上での工夫ですから、その一部を取り出したように描いても一目で「光琳ですね。」と分かり、その帯をつけている人が満足もし、見た人も興味をひかれると言うわけです。
職人と言えば求められものを忠実に高度に作るという印象ですが、こんな創造的なことが行われていたんです。
- 2014/10/18(土) 00:01:42|
- 伝統工芸
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