京都西陣の工芸です。と言っても「伝統」と言えるほど古くからある技術ではないのですが。
織物は縦糸と横糸を交差することでできるものです。

その横糸として紙に金は銀の箔を置いてモノを細断して織りこむ技術があります。
金箔を置く台紙にはミツマタを原料としたきわめて丈夫な和紙を使います。大蔵省印刷局発行の紙幣にもミツマタを原料とした紙が使われていますね。

着物の帯など、一層豪華にあでやかにという要求は、ついに「螺鈿さえ横糸にして織りこむという技術になったのです。
「螺鈿は、主に漆器や帯などの伝統工芸に用いられる装飾技法のひとつ。貝殻の内側、虹色光沢を持った真珠層の部分を切り出した板状の素材を、漆地や木地の彫刻された表面にはめ込む手法、およびこの手法を用いて製作された工芸品のこと。螺は貝、鈿はちりばめることを意味する。」とウィキペディアには悦明されています。

貝の「真珠層を薄く剥いで板状にしたもの」をカッターナイフで様々なデザインに切り出すのです。
それを紙に貼り、さらにそれをミリ以下の細さに裁断して、経糸を上げてはその隙間にさしはさむのです。
当初の絵柄がずれないように引き箔を織りこむのは織子の技能です。

70代後半のこの方にも技能を継承するお弟子さんはいません。
あと十年は頑張ってもらわないとと言いますと「いやあ、それはちょっと・・・・1年そこそこだろうねぇ。それ以上はねぇ。」

私はこのブログにも何度も書いてきましたが「日本に京都があってよかった」なんて観光行政が呑気なことを言っている場合ではないのです。
もう伝統工芸が作ってきた京都などというものは博物館や押し入れの中にしかないという状況が数年後には現前するのです。
そしてそれは不可逆的に状況として・・・。

世界からも注目される京都。しかし、もはやその京都は昔語りの中にしかなくなるのです。間もなく。
深刻な欠陥をいくつも抱えたF35A戦闘機の1機当たりの価格は約116億円に上ります。
政府はそれを147機買う計画です。総額1兆7052億円ですが。ランニングコストは際限なく増えていく。
そうした兵器で守るべき日本の内実は、いったいどうなっているのかということです。
※写真の職人さんが、そういうことを言っているわけではないので誤解のないようにしてください。
- 2019/08/01(木) 00:00:19|
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