矢絣のような模様を織り出しています。
絣の場合は経糸を「ふせ」て(つまり防染用の紙を巻いてそれを糸で硬く縛って、その縦糸の染まったり染まらなかったりした部分をずらすことによって模様を出します)矢絣模様を作るわけですが、この場合は横糸を通すときに少しずつくぐる縦糸をずらすことで模様を作り出します。

ここでは経糸の数がそれほど多くはないのですが、それでも結構辛抱強い作業になりますが、これが着物用の幅になれば、実に手間のかかる作業になると思います。
筬(おさ)をひいて、たたくようにして横糸を詰めながら水平に整えています。

横糸を通すために杼を縦糸を選んでくぐらせています。

作業の説明をしようとする写真を撮っているのではないので、織りてさんの表情や姿勢や腕の動きなどに注目して撮ります。
こういう写真を展示すると、何を作っているんですか、何をしているんですか、あの道具は何ですかなどという質問をよくされます。
展示会場の方にも、それがわかるような説明をつけてくださいと言われることがあります。
私にとってはこれが西陣織であるかどうかなどは大した問題ではないのですが。
風景写真が展示されている会場で、ここはどこですかとか、あの山の名は?などというような質問ばかりに終始するのをよく見かけます。観光ガイド用の写真じゃないのにね。
どうも写真を「見る」ということについての文化が未成熟なのかなと感じることがあります。

まあ、私の場合は、それだけこちらの力量も不足しているんでしょう。

それでこうして杼の方はぼかして解て散るんですけど。
たぶん、見る側の関心は杼がどういう風に使われているか、などになるんでしょうね。そういう情報を伝えるのが写真だ、ということかな。
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- 2023/08/09(水) 00:00:05|
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写真を撮ることについていろいろな議論があり、様々な人の考え方が披歴されている。
それぞれ聞くべきものがあるし、私の考えももっと深めていきたいと思っている。
ただ、最近思うことは、とにもかくにもこの年齢で、人様の肖像をとらせてもらっていること、このことについて、もう少し自覚的になる必要があろうということです。

まあ、そんな風に私が考えようと考えまいと、世間のどなたにも関わりのないことですし、「好きなようにしたら?!」としか反応はないわけですが、そういう話を先に行ってしまった後輩のM君ぐらいには、話してみたいと思って、自転車で走りながら、ブツブツとつぶやいています。
そういうお年頃年でしょう。

こういう写真を撮っても、撮るときの楽しさとは別に、撮った写真を見て、ある感慨のある事に気づくのです。
まして、音楽を聴きながら調整をしたり見直していると、なおさらです。

うまく撮れたなとか、撮れなかったなというようなことではなしに、人ひとりの人生のほんのひと切れでは在れ、それをまじまじと見ているということ、そのことの滋味を感じているわけです。

今度のはインド・アイズ展に出す写真にしても、個展で展示する写真いしても「それがどうした。」というような凡庸なものです。
ただこの凡庸さの中に「人が様々に『生きている』」ということを自分が感じているということ、それを共感できたらいいなあ、とそう思うのです。
別に「すごい!!」と唸ってくれなくてもいいんです。

もう、7,80%は、人が褒めるとか評判になるということを期待してはいないのです。
たぶんもう少しすれば90%程度は、そういうことになるだろうと予感しています。
写真を撮るということの意味は人生のステージによって違ってくるんじゃないかと思うのです。

ただ、そうしていろいろなことを削いでいった先に、何が出てくるかには興味があります。
それに実際、削いでいけるのかどうか、そのことにもですね。年を取るということは、どんな年齢についても個人的には未体験ですからね。
そのことを写真を撮るということを通じて体験していく、ある人は絵を描くこと、将棋をすること、釣りをすること、などなどを通して感得していくのでしょうね。
- 2023/08/08(火) 00:00:03|
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写真を撮らせてもらってややあって「あの、よく職人を取材している方ですか?」
「うん? 取材ってことでもないですが、ここでも多くの職人さにを撮らせてもらってきましたが・・・。」

「実は9年前に、この仕事について間もないころですが、ここで実演デビューの時に撮ってもらいました。」
「ええ?! そうだったんですか。ごめんなさい記憶がなくて。」
「撮ってもらった後で、先輩職人さんに『おまえ、ブログに出てるぞ。』と教えてもらいました。」
その教えてくれたという職人さんはそれより先に撮らせていただいた方で、このブログで紹介していた人だそうです。

西陣織や友禅などの職人さなっちの中では「知る人ぞ知るブログ」になっているんですね。 「エッヘン」

それでこの人の仕事歴は9年ということで、でもこの業界ではまだ若手ですね。
職人仲間で作っている若手の会(「京の伝統産業わかば会」)があるんだそうですが、その中で頑張っているそうです。

この人の「金彩」は着物の仕上がりの最終工程に出てきます。 絵柄にきらびやかな加飾する仕事ですね。
金箔や金粉を使う仕事はここではできません。エアコンの風で飛んで行ってしまうからです。
使う素材は金や銀ばかりではなくてアルミなどもあるわけですが、最近はロシアのウクライナ侵攻戦争の影響で金の価格が高騰していますから、困っているようです。
そうでなくとも仕事部屋は常に真空掃除機で箔や粉を集めて再生業者にちゃんと引き取ってもらう訳で、そうでなければ高コストになってより高価になってしまいますね。

この人は御父上がこの仕事をしてきたのでそれを継ぐ形で仕事を始めたわけですが、金彩の仕事の、先輩とも後輩ともずいぶんが年が離れているそうです。
やはり後継者は少ないそうです。
でも、着物の仕事がなくなるわけではありませんからと職人の技術継承に意欲を燃やしています。
- 2023/02/26(日) 00:00:05|
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